メディウムという言葉を聞いたことはありますか? トールペイントでは、絵の具に混ぜたり絵を描く前に使ったり、描いた後に使ったりするものがたくさんあります。
ここでは、アクリル絵の具を使う時に使う《メディウム》について書いていきます。
メディウムとは?
溶剤のことをメディウムと言います。
絵の具の乾燥時間を遅くしたり、絵の具に混ぜて質感を変えたり、表現の幅を広げるのにも役立つものです。
絵具をよりよくコントロールするのに使うものとも言えます。
1種類のメディウムで様々な使用方があるので、必ずしも各項目に分けた使用用途だけではありません。便宜上分けていますのでご了承ください。

下地剤
下地材はその素材や目的によって使用するものが異なります。使用目的別にまとめてみました。
シーラー
《シーラー》はトールペイントをする時に一番使う下地剤です。《シールするもの》という意味です。メーカーによって呼び方は違いますが同じものと思っていいと思います。
素材の性質 | 浸透性の素材 絵の具や水分を吸収する素材 | 非浸透性の素材 絵の具や水分を吸収しない素材 |
素材の主なもの | 木材・キャンバス・合成樹脂・ 布・テラコッタ | 金属・缶・石 |
メーカー | 商品名 | 商品名 |
デルタセラムコート | デルタ水性シーラー | メタルプライマー |
デコアートアメリカーナ | マルチパーパスシーラー | マルチサーフェスシーラー |
ジョソーニャ | オールパーパスシーラー | |
j.w | ファーストステップウッドシーラー | |
With | パーフェクトシーラー | |
ホルベイン | シーラー |
浸透性の素材
浸透性ですので、シーラーを塗っていない素材は絵具を吸収するため、ムラになったり何度も塗ったりしなくてはなりません。そのため、シーラーで表面に防護壁の働きをしてもらう必要があります。
非浸透性の素材
この素材は表面がつるつるしていることが多く、絵の具が定着しにくい特徴があります。そのため、下地を塗ることで、表面にわずかな凸凹を作って絵具を定着しやすくしてあげるシーラーを使います。
ヤニ止めをするシーラー
木の節や生木から出るタンニンやヤニが表面に出るのを防止するシーラーもあります。パイン材は松ヤニが出やすい素材ですのでこちらをしっかり塗ることをお勧めします。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
デコアート | ウッドシーラー | ブリキ製品の錆止めにもなる 薄めずそのまま使う |
ジョソーニャ | タンニンブロッキングシーラー | 金箔貼りの接着剤としても使える |
ジェッソ
ガラスやタイル素材以外のほとんどの素材に使える下地剤です。ほとんどが濃い白色なので上に乗せる絵具の発色もよくしてくれます。白っぽい(明るい)バックの色にしたい時はおすすめです。ジェッソを使う時はシーラーは塗りません。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
デルタ | ジェッソ | 30分程度で乾燥する。 布製品にも使用可。 |
ジョソーニャ | ジェッソ | 木製品・金属・紙などの素材に適用。 基底材に適し、どんな荒い表面も滑らかなマット調になる |
リキテックス | ジェッソ | 炭酸カルシウムとチタニウムホワイトの顔料で できた純白の地塗り剤。 乾燥時間1~2時間(完全乾燥72時間) |
ペベオ | ジェッソ | アクリル・水彩・オイル用の下地剤。 |
フォークアート | ジェッソ | 1回ごとに水サンドかけをして2~3回重ね塗りをすると 表面がスムーズになる |
ホルベイン | クリア ジェッソ | 乾くと半透明のつや消しで、水に溶解しない下地になる。 |
補修材
木製品のへこみや傷があると、作品に影響することがあります。そんな時はまずは補修材を使って表面をフラットにしてあげてから、下地剤を塗りましょう。補修材を塗ったら、表面をサンディングして滑らかに仕上げてくださいね。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
デコアート | ウッドフィラー | 傷や穴、節などを埋めるのに最適なパテ。 柔らかく扱いやすい。 乾燥後サンディングやペイントも可能。 絵具と混ぜて利用も可能。 |
ジョソーニャ | ウッドフィラー | デコアートアメリカーナと同じ |
ボンド | ウッドパテ | 合板の割れ隙間の補修充填に使う。 乾くと木質と同じ硬さになる。 |
その他の下地剤
《ホワイトライトニング》という下地剤もあります。
これは木製に塗り、シーラーの役目もあり、流木のように白っぽくなった効果を出す下地剤です。(ホワイトステインとも言う)
アクリル絵の具と混ぜて好みの色のベースコートとしても使用できます。
グレージングメディウム
下の絵を消すことなく透明な色を上からかける(グレイジングする)時に使います。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
ジョソーニャ | クリアグレージング | 透明に上がけをする時に使う。 絵具と混ぜて木目出しをする。 |
〃 | リターダー& アンティーキング | 絵具の乾燥時間を長くするときに使用。 アンティーク調にしたい時は1:1ほどの割合で混ぜて塗り、 版画脇の時に布でふき取る。 |
デコアート | グレージング | 半ツヤタイプ。 シェイドやハイライトを入れる時に絵の具に透明感を出す。 絵具の保護膜としてニスをかける前に塗る。 |
〃 | フォーグレイジング | 絵具を滑らかにするための薄め液。ステインにも使える。 |
With | クリアグレーズ | アクリル絵の具に混ぜると乾燥時間を遅くすることができる。 |
特に、ジョソーニャの絵の具を使って作品を描く場合、ジョソーニャの絵の具にはシーラー成分が入っていないので定着がよくありません。ひと工程ごとにグレージングメディウムをかけて定着させる必要があります。
リターダー・ブレンディングメディウム
リターダーは基本絵具の乾きを遅くし、作業時間を延ばしたい時に使います。乾きが悪いため、次の作業に移りにくいという点もあります。
ブレンディングメディウムはリターダーほどの乾きを遅くすることは少ない(使用量にもよります)ので、広い箇所はリターダー狭い箇所はブレンディングメディウムと使い分けるととても便利です。
先にまとめたグレイジングメディウムと同じ商品名がありますが、いろいろな使い方ができるのでこちらにも入れました。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
ジョソーニャ | リターダー& アンティーキング | アクリル絵の具とメディウムの乾燥時間や効果時間を 長くする。水で薄められない。 |
〃 | ジェルリターダー | ジョソーニャ絵具と合わせて使用するとオイル絵具の様な 使用感を楽しめる。これと絵具1:2で混ぜて使用すると アンティーキング仕上げになる。ステイン剤としても使用可。 |
〃 | マジックミックス | クリアグレージングに似たメディウム。絵具の乾きを 遅くする。滑らかで平らに塗り重ねたい時に最適。 |
〃 | フローメディウム | 絵の具・メディウム・ニスに少量混ぜて塗りやすくすることも できる。絵具に好きし混ぜると筆ムラが残らず筆をスムーズに 動かすことができる。 |
デコアート | エクステンダー& ブレンディング | 絵具やメディウムの乾きを遅くする。 |
〃 | ブラッシュブレンド エクステンダー | 絵具の乾きを遅くし、長いストロークを描くときも 使用可。布用ソーソフトと共に使できる。 |
〃 | イージーフロート | 筆に含ませサイドロードするととてもなめらかになる。 |
フォークアート | エクステンダー | アメリカーナに混ぜ絵具の乾きを遅くし、透明感を出す。 |
? | アクリルブレンド | 絵の具に混ぜる量により、のびをよくし、ぼかしや薄め の効果が出る。固まりかけた絵の具を柔らかくする。 |
サンーケイ | リターディングジェル | アクリル絵の具と混ぜて乾きを遅らせるジェルタイプ |
モデリング剤
作品の質感や厚みを出すときに使う溶剤です。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
ジョソーニャ | テクスチャペースト | 乾燥しても柔軟性がありひびが入らない。 水性アクリル絵の具と混ぜて使用できる。 ペイント前やペイント中にテクスチャーを 作ることができる。 |
リキテックス | ライトモデリング ペースト | 軽くて割れない盛り上げ剤。柔らかな質感。 |
デコアート | テクスチャライジング | 絵の具に混ぜてざらざらした質感を出す。 |
〃 | シックニング | アメリカーナ絵具と1:1で混ぜるとペースト状 になりペイントナイフで立体的な表面作りができる。 |
クラックル剤(ひびわれ)
作品にわざとひび割れを起こして、アンティークな表現をする時などに使います。
このメディウムは2タイプのものがありますので、よく理解してから使いましょう。
メディウムを塗った後に絵の具を塗るとひび割れを起こすもの
特徴と使い方
アクリル絵の具で下塗りをし、乾燥させた後にメディウムを塗る。乾いたら、下塗りの色と対照的な絵の具を塗るとひび割れをおこす。一般的には上から乗せる絵具を厚く塗ると大きなひび割れを、薄めに塗ると細かいひび割れを起こします。
《デコアート社 ウェザードウッド》は塗る方向に割れるので、自分がどのような割れ方をしたいのかはっきり決めてから筆を動かす必要があります。使い方はアクリル絵の具で下塗りをし、乾燥させた後にこれを一方方向に塗る。乾いたら、下塗りの色と対照的な絵の具を筆で一方方向に塗る(もしくはスポンジでたたく)。
メーカーと商品名
デコアート社 ウェザードウッド / ジョソーニャ デコアークラックルメディウム / デルタ クラックルメディウム / J.W クラックルメディウム / フォークアート クラックルメディウム
メディウムそのものがひび割れを起こすもの
特徴と使い方
メディウムそのものがひび割れを起こすので、絵を描いた後(すでに完成している作品)にメディウムを塗ることでひびがはいります。
作品が乾いたらその上に”ケーキにクリームを塗るよう”やさしくメディウムを柔らかい筆で厚く塗り広げる。乾燥後、割れ目にステイン剤・えのぐ・金粉などを擦りこみ、ひび割れを浮き出します。
メーカーと商品名
ジョソーニャ クラックルメディウム *ジョソーニャ絵具で描いたものが望ましい。
その他のメディウム
その他にもこれまでの分類に分けて入れることが難しいメディウムもあります。目的に合わせて使ってくださいね。
商品名 | 特徴・用途 |
クレイスターメディウム (ジョソーニャ) | 絵具の濃度を濃くし、乾燥時間が長くなる。少量の絵の具と多めの メディウムを混ぜたものを塗り、乾燥する前に引っかいたり板目や 木目を作ったり様々な効果あを楽しめる |
ペイントアドヒージョン メディウム | キャンドルに色をのせる時、絵の具と同量のメディウムを混ぜて使う |
パーライジングメディウム | 絵具と混ぜると真珠のような光沢が出る。 |
スタンピングメディウム | アメリカーナと1:1で混ぜるとスタンプ用のインク状になる |
キャンバスジェル | アメリカーナと混ぜキャンバスの上で使用するとオイルの ようなタッチの絵が描ける |
まとめ
今回はトールペイントで使う道具の中から《アクリル絵の具で使う一般的なメディウム》だけを取り上げてまとめてみました。
一口にメディウムと言っても多種多様のものが各メーカーから発売されてるので、トールペイントの世界で使うものを中心に、カタログで取り寄せられるものをできるだけまとめたつもりです。ご自身の目的に合わせて、自分が使いやすいものを見つけるときの参考になればと思います。
今回記した中にはすでに廃盤になっているものや、新商品の掲載漏れ等があるかもしれません。その点はご了承いただきたく存じます。
ニスやステイン剤などはまた別にまとめたいと思います。
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