トールペイントを知ろう:意味と歴史

トールペイント

皆さんは「トール」「トールペイント」「トールペインティング」ってご存知ですか?

2000年頃、日本でブームを巻き起こしたクラフトです。懐かしいと思われる方も、初めて聞いたと言われる方もいらっしゃるかと思います。

私は長らくトールを続けてきましたが、今なおその奥深さや楽しさに夢中です。そんなトールの世界をもっと多くの方々に知っていただきたくてこの記事を書くことにしました。

トールペイントってなに?

トールペイントの「トール」は、「tole」の日本語読みです。

もともとはフランス語で「鉄の薄いシート」「鉄の平たい板」いわゆる「ブリキ」を意味します。

このブリキ製の品物に絵が描かれることとなり、そのうち「トール」は「絵が描かれたブリキ製品」のことを指すようになりました。

今ではその手法、技法を用いて描くことを「トールペイント」「トールペインティング」というようになりました。

どこで始まった?

15世紀後半、ヨーロッパで始まったと言われています。

ヨーロッパで生まれ育ったものは「フォークアート」(民俗芸術)と呼ばれて、国によって宗教的な絵画だったり、王室の装飾だったり、庶民の家具などを飾るものであったりと、様々な形で受け継がれてきました。

この「フォークアート」は日本の陶芸の世界で言えば「柿右衛門」などの伝統工芸のようなものかもしれません。 今なお、その国々で脈々と受け継がれているアートです。これについては別に書きたいと思います。

どうのようにして広まった?

その「トール」は移民の人々によってヨーロッパからアメリカにもたらされました。

イギリスから輸入されたブリキ板をもとに板金職人が加工した様々な商品に絵が施されたものが販売されることで広がって行きました。 その中で絵が小さいものは「Painted tin」、豪華に装飾されたものが「tole」と呼ばれました。

アメリカでは、その生活や風土、歴史などと絡みながら、木材、ブリキ、布、陶器などあらゆるものにペインティングするようになり「トールペインティング」として定着していきます。

第2次世界大戦後、使い勝手の良さや色の豊富さ、濃度の調節もできるアクリル絵の具の登場により、トールはクラフトとしての地位を確立しました。

さらに、40年ほど前、誰でも親しみやすく上手に描けるように、図案を使った合理的なテクニック指導法がシステム化されたことで、より装飾的なデコラティブペインティングとして日本でも広く広がっていきました。

今は?

日本では、日本の季節や生活に寄り添った日本独自のスタイル図案がどんどん増えています。

装飾技法もモデリング材やシルクスクリーンなど、新しいものが出てきて、より簡単により豪華な作品を作れるようになり、表現の幅がますます広がってきました。

今まですべて手書きしていたものは、シルクスリーンを使うことでずっと繊細で綺麗な模様が作れるようになりました。細かい作業が億劫になってきた方々にはとても便利なツールといえます。
ステンシルプレートを使ってモデリング材(スタッコやデコモなど)で模様を入れる装飾技法も手軽にできるもので、以前にはなかったものです。

海外の英語で書かれたパケットを必死で読んで描いていた時代から、今では日本人ペインターの素敵な作品を楽しく描くことができる時代になりました。

まとめ

図案化された絵柄、決められた筆づかいのテクニックを使って描くというマニュアル化されたトール&デコラディブペインティグは、絵が描けない人でも(俗に絵心がないという)誰でも描けるクラフトです。

ピンと来ない方は、例えば玄関先に飾ってあるウエルカムボード、ティッシュボックスや小物、雛飾りなどの日本の行事(イベント)の飾りなど、意外に身近なところでトールペイント作品を見つけることができると思います。

ヨーロッパからアメリカへ、そして日本へ伝わってまだまだ新しいクラフトですが、自分の好きな色で好きなものを自分で作り、使い、飾る素敵なクラフトです。ぜひたくさんの方にこのクラフトを楽しんでいただきたいと思います。

参考 トールペイントなんでもQ&A(日本ヴォーグ社) / SDP WebSite

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